第2話:

ガスストーブのカタログスペックを信用してはいけない

 

ストーブ、つまりコンロはキャンプ道具を買い集める中でももっとも興味をそそるものの一つであり、ビンテージものストーブ専門のコレクターや、私のようにニューモデルがでるとついつい手を出してしまうどうしようもない人もいる。カタログのスペック欄が穴が開くほど熟読して内容を覚えてしまっている人も多いことだろう。

そして気づくのは、「あれ、ホワイトガソリンストーブの方が火力が強いという訳ではないんだ」ってこと。まぁ、ガソリンのバーナーはいかにもパワフルな燃焼音がして、空気を何回もポンピングしてからでなければ使えないという雰囲気を盛り上げる儀式もあり、いかにも強そうなんだけど、実際には最新のモデル同士で比べると、ガスの方が火力が強いものの方が多い。(火力は、カタログ上で*** kcal/hという表記)

カタログの中には、もっともらしく1リットルの水が、ストーブの機種毎に何分で沸騰するかなんていうグラフが載っていたりする。私に言わせればこれが誤解の元。しかも、ガスカートリッジを氷漬けにした状態でも点火できる。なんていう仰々しい写真が自慢げに載っていたりするからさらに問題だ。

ガソリンのほうが、低温に強いとか、火力が強いと巷ではよく言われるが、カタログスペックだけを見ると、ホワイトガソリン伝説は完全に崩れている。カタログスペックも氷漬けの写真も嘘というわけではないが、経験的にはやはりホワイトガソリンの方がパワーでも低温にも頼りになることは事実だ。

これは、車のエンジンの馬力が大きいだけでは必ずしも速い車であるといえないのと似ている。確かに、最高速度だけ考えると馬力の大きいエンジンが優勢だが、日常の体感的な速さや力強さは、多少馬力が小さくてもトルクのあるエンジンのほうが感じられるのと同様である。

特別頑丈なボンベを必要とするプロパンガスを除けば、カセットコンロやキャンプ用のコンロで使われるブタンガスは低温に非常に弱くて、ブタンガスの中でも比較的低温に強いイソブタンでも、せいぜい沸点は−10℃程度。大火力で一定時間使っていると、カートリッジ内のガスの気化熱で10度くらいは温度が下がるので、外気温が0℃付近になると安定して使えないことになる。(沸点以下になると、カートリッジ内にガスが十分残っていても全く出てこない)これが、ガスストーブが低温に弱い理由だ。ここまで低温ではなくても、ガスカートリッジは使用中にどんどん気化熱で冷え、連続使用すると火力が弱くなってしまう。

この欠点を克服するために、各メーカーはカートリッジが気化熱で冷えても周囲の空気から熱を吸収しやすくして気化を助けるようにカートリッジを特殊な構造にしたり、沸点が-40℃以下というプロパンガスを混ぜたりしている。プロパンガス100%では、圧力が高すぎて小さなカートリッジではとても持たないが、プロパンの混入率が35%程度までなら、なんとか大丈夫らしい。プロパンが入っていれば、温度が低くても先にプロパンだけ気化するのでちゃんと使えるのである。

でも、気温が低いと、先にプロパンだけ気化して残りのブタンだけになると燃え残ってしまうことに注目しなければならない。ガスストーブのカタログスペックを鵜呑みにできないのはそんなわけだ。

個人的には、夏のキャンプに限れば、カタログスペック通りと信用しても良いし、ガスの方が使い勝手も良いと思うが、私のように年中野営する人間にとっては、どれか1つと言われれば、やっぱりガソリンストーブ以外に選択肢はないと思う。