
鰻、焼肉、地鶏、秋刀魚、鮎。。。 日本人は誰でも経験的に「炭火焼きが一番うまい」と知っています。なぜ炭火で焼いた物はうまいのでしょうか。
炭の成分
化学的には、炭はほぼ純粋な炭素です。安価な炭でも90%以上が炭素で、最高級の備長炭になるとなんと純度98%の炭素なのだそうです。ですから、炭を燃やしても二酸化炭素と熱しか出ません。そのため、炭火で焼いた物は香ばしくぱりっと焼けます。また備長炭などの高純度な炭を燃やすとまったく煙や臭いが出ません。これは、木炭に不純物(木ガス・硫黄・タールなど)が残っていないことの証拠で、食材そのものの風味を壊さずに加熱することができます。
水蒸気を発生させない
石油やLPGなど炭以外の燃料は、大量の水素を含むので二酸化炭素以外に大量の水蒸気を発生します。冬、部屋の中でストーブを焚くと壁や窓が結露するのは大量の水蒸気が出ていることの証です。 ですから、普通に直火で焼くと湿っぽい焼け方になりますが、炭火で焼くと表面はパリッと焼け、表面に肉汁を遮る膜ができるので、遠赤外線効果とあわせて、中は肉汁を失わずにジューシーに焼く事ができます。
備考:家庭用のガステーブルに組み込まれている魚焼き器は、なぜ炭火で焼くとうまいかをよく研究して、この問題をかなり克服しています。 中の構造をよく見ると、魚はガスの火で直接焼かれるのではなく、ガスの炎で金網を加熱して赤熱させ、赤熱した網から放射される遠赤外線によって間接的に加熱されるようになっています。 ガスは、魚よりも高い位置で燃焼してそのまま上昇気流で天井の穴から抜けていくようになっているので、水蒸気が食材に当たることがないようになっています。
遠赤外線効果
炭火とその他の燃料を燃やしたときの差はこれだけではありません。ガスの青っぽい炎は、直接的に焼熱熱を食材に触れさせる様にして焼きますが、木炭のような赤い火は、直接的な燃焼熱は以外に少なく、ほとんどは大量の赤外線/遠赤外線として放射します。この中でも、遠赤外線は食材の内部まで浸透してそれ自身を発熱させますので外部と内部の加熱差が少なくむらなく焼くことができます。
そして、遠赤外線にはタンパク質を分解してうまみ成分であるアミノ酸をより多く作り出す働きもあります。
このような炭の特性により、よりおいしそうに(ぱりっと)焼け、食材の風味を損なわず(余分な臭いがつかない)、理想的な加熱でうまみも増加します。やはり炭火で焼くとうまいのは理論的にも本当なのです。
ウバメガシをはじめとするカシの木を、高温で焼いて作った炭。硬質で、重量感があり、炭素以外の不純物が少ない。表面が白い粉をふいている様に見える。炭を叩くと、金属のような音がし、割るとガラスのような強い光沢があります。
とても着火しにくいが、燃焼温度が高く火持ちがよい。更に不純物の燃焼によるいやな匂いや煙がほとんどないので、料理用の理想的な木炭です。こういった性質を持つ木炭を白炭と言いますが、備長炭はその中でも最も高級な物です。非常に高価なのでお手軽アウトドア向きではありません。
いわゆる普通の木炭。 ナラをはじめとする広葉樹(ナラ・ブナ・クヌギなど)を原料として作られた最も多く売られている木炭で、アウトドアショップ、ホームセンターで売っている物は基本的にこれです。 備長炭などの白炭の表面が白い粉を吹いているように見えるのに対して、こちらは全体が黒色です。 白炭より軟質で軽く、叩いても軽い音しかしません。
白炭よりは着火しやすく扱いやすいですが、よくも悪くも普通の炭です。アウトドアで使うには必要十分でしょう。但し、高品質な物から粗悪品まで値段も品質も幅が広く、粗悪品は十分に炭化していない生焼けの炭がかなり混じっているので臭いや煙が出てしまいます。
ナラ炭の次にどこのアウトドアショップやホームセンターでも見かけるもので、赤いビニールでシュリンクパックされた、黒い巨大モナカアイスの様な物です。木炭や石炭の粉を固めて、紙(業務用の卵の緩衝材みたいなもの)に挟み、油を染みこませてあります。ライターで直接着火できるのですが、一番お手軽な炭ですが、煙や匂いがするので注意が必要です。火持ちはよくありません。
おがくずを固めたものから作った炭です。竹輪の穴が空いており、焼き肉屋でよく使われている炭といえばお分かりでしょうか。低価格で白炭に近い燃え方(高温で火持ちがよい)をしますので、比較的安価で備長炭に近い高価を得られます。残念ながら、業務用として流通していることが多いので、ホームセンターやアウトドアショップで見かけることがほとんどありません。
切炭(きりずみ)
丁度七厘に入る大きさに切りそろえられた炭です。少々割高ですが、使い勝手がよいのが魅力です。
バーベキュー炭
大きさ無選別で、小さな欠片から大きなものなで混ざっています。口の広いバーベキューコンロで使うには大きさが混ざっていても問題ないありませんが、七厘で使うには大きなものを割って使わなければなりませんので、ちょっと不便です
意外かもしれませんが、木炭は本来とても着火しにくいものです。マッチやライターで着火させることはできないので工夫が必要です。
木炭に火を起こす方法はいろいろありますが、それぞれの特徴をご紹介します。
新聞を丸めて種火にする
着火材を使用する
着火材には大きく分けて2種類あります。
アルコールをゼリー状に固めたタイプ (ゲル/ゼリー状、ロウ状)
植物繊維に油を染みこませたタイプ
ガスバーナー/トーチで火をつける
ガソリンをかける
チャコールブリックスを種火にする
誰もが真っ先に思いつくのが新聞紙を丸めて火を付ける方法ですが、実はこれが一番難しい方法です。ガイドブックには新聞でうまく着火させるか方法について書いてある物も多いのですが、私はお勧めしません。普通は新聞だけが燃えて灰が大空に舞い上がるばかりでほとんど炭に着火することはありません。これは、紙を燃やしても炎ばかりが大きくて温度が低く、短時間しか燃えないため炭が十分に赤熱されないためです。新聞紙を堅めに丸めて火をつけもすぐ消えてしまうことがほとんどです。
特別な道具もいらずお手軽で確実なのは着火材を使う方法です。炭を底に置き、その上に着火材を置いて火をつけます。火がついたらまたその上に炭を乗せます。着火材は火力が弱いので炭全体に火が回って使えるようになるまでにかなりの時間がかかりますが非常に確実です。
次にガストーチ(バーナー)で火をつける方法です。炭を一カ所に山積みしておき、山の中腹の炭と炭の隙間をねらって集中的にあぶります。この方法ですと1-2分で着火し、数分後には料理ができるほどの火力になります。私はもっぱらこの方法を使っています。写真のバーナーはカセットボンベに取り付けるタイプです。アウトドアでガストーチ非常に役立ちますから、一つ持っておくとよいでしょう。
炭にガソリンをかける方法は極めて危険ですから絶対にやらないで下さい。炭に染みこんだガソリンだけが燃え、気化熱で炭はほとんど加熱されない上に、臭いと黒煙がきついので何のメリットもありません。
チャコールブリックスを割り、着火材の代わりに使うこともできます。メリット・デメリットはその他の着火材を使う場合と同じです。
火おこしのポイント
炭に火をおこす時のポイントは
炭は周りの温度が低いとうまく燃え広がりません。火のついた炭も周りの火から話しておくと立ち消えしてしまうことさえあります。
火は下から上へ燃え広がりやすい。
燃焼熱による上昇気流で下から上へと常に新鮮な空気が流れていくように重ねる。
ということです。これらを踏まえた上で具体的な手順を説明すると
まず、着火材・トーチを使って小さめ・細めの炭を探し、2-3個でもよいから明らかに赤熱し始めるまで確実に炭に火を付ける。(広く薄く着火しようとするのはダメ) 着火材を使う場合は、着火材に火をつけた上に炭を乗せるようにします。
火のついた炭は、できるだけ狭い範囲に着火した部分同士を向き合わせるように集める。
山に積む時には、大きな火がついた炭、小さな炭を山の底かつ、中心部分へ置く。火のついていない炭は、その上へ三脚状に立てかける。
これらのルールを守れば、団扇であおいだりする必要もなく15分〜20分程度で調理十分な火力を得ることができます。
アウトドアでよく使うナラ炭に限定しても、店によって非常に価格差があります。炭は、大量に仕入れると非常に割安になるものです。私の経験では、大量に仕入れて大量に売っているところほど値段が安くなります。安いところでは、ある程度の量(6kg〜10kg以上)を購入すると、100円/kg程度の値段で買うことができます。
仕入れ方によってあまりにも価格差が大きい物なので、一概に値段が高いから高品質なものとは言い切れません。
安価な物は大きさがそろっていない物が多く、切れ端のようなものがかなり混じっていますが、小さい物は火付きもよいので、最初の着火用には非常に役立ちます。ですから実際に使う上では切れ端が混じっていてもデメリットにはなりません。
避けたい粗悪品の炭
ホームセンターやアウトドアショップで売られている炭の中にはかなりの割合で粗悪品が売られています。 粗悪品の炭の場合、一見品質のよい炭と変わりませんが、完全に炭化しておらず、生焼けで、タールなどの不純物がかなり残っているので燃やすと大量の煙と臭いが出てしまいます。 この臭いと煙は、炭全体が赤熱する頃になると先に燃え尽きてなくなりますが、補充するたびに何度も煙が出るので避けたいものです。